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2018年9月 3日 (月)

恋はみずいろ

今から少し昔の、父がまだ元気だったころのお話。


…父が、新しい車を買った。

父以外に私も同じ車に乗るので、お洒落で可愛い車、たとえば、フィアットのパンダとか、フォルクスワーゲンのビートルとか、ローバーのミニとか、そういう小粋な車がほしいと散々ねだっていたのに、家にやってきたのは、会社の社用車か業者の貨物車みたいな、私にとっては本当にどうでもいい、非常に残念なワゴン車だった。

私と父、二人しか家族はいないのに。
こんな大きな車買ってどうするん?

現在では、いわゆる「ミニバン」と呼ばれるジャンルのその車。
乗っている方々には大変申し訳ないのだが、私にはまったく興味が湧かないどころか、嫌悪感すら抱く種類の車だった。

そういうわけなので、当時の私は、その車に乗ることもほとんどなかった。
母のお墓参りに行くときも、背中のリュックに花束を突き刺して、「スレイプニル」と名付けていた相棒のバイクに跨って、いつも独りで出かけていた。


それから数年後。
父は、帰らぬ旅に出た。
そのころ、想い続けていた夢が叶った私は、遥か遠く離れた北の大地の上で、機械でできた「鋼の馬」ではなく、赤い血の流れる「生身の馬」に跨っていた。

父危篤の知らせを身内から受け、働いていた北海道の牧場から実家のある兵庫の病院に私が駆けつけたとき、父の身体はすでに冷たくなっていた。

すっかり別人のように変わってしまっていた父の顔は、うっすらと微笑んでいるようにも見えた。
閉じられた父の右の瞼から、頬を伝って涙が流れ出た跡があった。
空の上で先に待っていた私の母に、父がようやく巡り合うことができたことを、私はそのとき知った。


父の遺骨の納骨も済んでしばらくが過ぎたある日。
家に遺された車の整理をしていると、車内のダッシュボードの中から、父の好きだった演歌のCDに混じって、見慣れないジャケットのCDが一枚見つかった。

車のエンジンをかけ、何気なくそのCDをカーステレオに挿入した私は、スピーカーから流れてきたメロディを聴いて、思わず声をあげた。

それは、私が中学生だったころに校内で流されていた、「掃除の曲」だった。


『恋はみずいろ』


反射的に手にしたCDジャケットには、そうタイトルが記されていた。


中学1年生だった当時13歳の私は、同じクラスのひとりの女の子に、ほのかな恋心を抱いていた。
それは、私にとっての「初恋」だった。

3学期の最後の席替えの日。
私は、その女の子の隣の席を獲得するという、自身の人生において最大級に幸運なくじを引き当てた。
DQXで言えば、「特等のふくびき」が当たったようなものだ。

私が通っていた中学校では、お昼休みが終わって午後の授業が始まる前に、「掃除の時間」があった。
当番制のトイレ掃除を除いては、原則的に同じ班で教室などの掃除を行っていたので、隣の席のその子と私は、二人で掃除をする機会も多かった。

私にとってそれは、まさに「神様が与えたもうた幸運」だった。
その後、その女の子には別に好きな男の子がいることを知り、「天国」と「地獄」を同時に味わうことになったのだが(笑)


あのとき聴いた、なんの曲だかもずっとわからなかった「掃除の曲」が、父の遺した車から流れてくるなんて。

演歌しか聴かないと思っていた父が、なぜそんなCDを持っていたのか。
父が死んだ今となっては、その理由も永遠にわからない。
私には、少年のころからずっと探し続けてきたその曲の名前を、父が教えてくれたような気がした。


現在、私は、念願だったお洒落で可愛いイタリアの車を手に入れた。
父が買った車とそのCDは、私の手元には残っていない。
でも、愛犬を助手席に乗せて両親のお墓参りに行くとき、新しい車のカーステレオからは、いつも同じ音楽が流れてくる。


『恋はみずいろ』


あの日。
たぶん、同じ曲を聴きながら、今私が辿っている同じ道を走っていたに違いない父の面影を、青い空に追いながら。

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25歳のころの私。

写真と文章は、とくに関係はありません(笑)

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