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2017年11月30日 (木)

『大航海時代 ~ノルウェーの乙女ソルヴェイグ 世界一周の航跡』 第四章「ソルヴェイグの記憶」

第三章「ティークリッパー」からのつづき




「ソルヴェイグの記憶」



オスマントルコを出航したアタシの艦隊は、それから1ヶ月後にブリテン島北東の都市、スコットランドのエジンバラに帰港した。
入港して早々、アタシの艦隊をイングランドからやってきた使者たちが待ち構えていた。

ロンドンへの出頭命令を受けたアタシは、エジンバラの郊外にあるアパートメントでゆっくりと休む間もなく、エリザベス女王の待つロンドンのウィンザー城へと向かった。

その後のことは、先の日誌にアタシが書き記した通りだ。

女王陛下との謁見を無事に終えたアタシは、ようやく「自分の家」に帰ることができた。
アタシの地上の住まいはエジンバラにある。
でも、一年のほとんどを海の上で過ごしているアタシにとっては、ペール・ギュント号が自分の本当の住まいだった。

新しい航海に出発することが決まった日の晩。
アタシは、ウィルカを船尾の艦長室に招いた。

「ようこそ、アタシの家へ」

緊張しているのか、それとも彼女本来の性質なのか、アタシがそう言って歓迎しても、ウィルカは澄ました顔のまま一礼しただけで、眉一つ動かそうとしなかった。
「ここに入ったのは、私以外にはあなたが初めてよ。さすがの女王様も、この部屋だけは検閲させなかったみたいね。艦長室は船の聖域だから」
アタシの聖域である艦長室のテーブルには、その日のために特別に作らせた料理が賑やかに並べられていた。

「新しい船での生活はどう?」
「なにも問題はありません」
「それはなにより」アタシは、自分とウィルカのワイングラスに、とっておきのシャンパーニュ産ワインを注いだ。
「VEUVE CLICQUOT(ヴーヴ・クリコ)のロゼ・シャンパーニュ、『1840年物』の赤ワインよ」
曇ったワインボトルの口から血液のように流れ出た赤紫色の液体が、二つのワイングラスに満たされた。
「このワインは、バルト海に沈んだ船の中に残されていたものなのよ。270年後の未来の海の底に眠っているワインを、過去の時代のアタシたちが飲んでいる。数奇な巡り合わせよね」
フランスシャンパーニュ地方で収穫された何種類もの黒ブドウをアサンブラージュ(ブレンディング)した芳醇な果汁の匂い。
その血は甘く、舌を蕩かすように口の中で転がった。

「こんな豪華な料理。私の国では司令官でもなければ食べることはできない。いつも干し肉と塩漬けの魚ばかりだった」
ウィルカは「未来の話」には触れず、アタシが注いだシャンパーニュに口をつけただけで、皿の上で湯気を上げている子羊の肉をじっと見つめた。
「外洋に出たら、アタシも同じよ」アタシは言って、二杯目のワインを自分のグラスに注いだ。「そう言うあなただって、士官のようだけど?」
「私は下級下士官です。あなたの国の『水兵長』くらいの身分だと思います」
「軍隊のことはアタシにはわからない。あなたはバルバリア海賊の船に乗っていたって言ったわね。海賊だったあなたが軍服を着ているってことは、『国家公認の海賊』だったってことかしら?」
ウィルカは、男物の白いズボンの上に、オスマン帝国の国旗の色に倣って染められた深緑色の礼装を着用していた。
「私が乗っていたのは、オスマントルコ帝国の『私掠(しりゃく)船』です。地中海を航行しているキリスト教国の船、おもにイスパニアの商船を襲撃することが私に課せられた任務でした」
「その中にはイングランドの船も?」
「何隻かは」
ウィルカはアタシの問いかけに淡々と答えた。

「あなたがどんな経緯で海賊になって、どんな目的でアタシの船に乗ったのかは知らないし、聞いたりもしない。アタシが見込んだのは、過去のあなたではなく、今のあなただから。明日からの航海も、アタシの副官として、あなたの力を貸してほしい」
ウィルカが頷くのを見て、アタシは二杯目のワインも飲み干した。
「オーケー。話は変わって、『あなたの部屋』のことだけど。もう少しの間だけ、奥の空き部屋で我慢してほしいの。ストックホルムに着いたら、副官のあなたにふさわしい部屋を用意させるから。あとねウィルカ。アタシにはそんな堅苦しい言葉遣いをしなくてもいいのよ」
「提督。私のことを買ってくださるのはありがたいのですが、それでは副官としての示しがつきません」
そう言ったウィルカの視線が、アタシの後ろに飾られていた一枚の風景画に向けられていることに気づいた。



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「その絵、たぶん……。いや、確かにアタシの生まれたノルウェーの田園を描いたものだと思うのだけど、絵の中にいる人物、どうもアタシがモデルみたいなのよね。でもアタシはそのことについては何も覚えがないの。どこで、だれが描いた絵なのか、ということも」

そこまで話したとき、「きゃっ」という小さな悲鳴が聴こえた。 見ると、テーブルクロスをまくり上げて客人の股の間から不躾に顔を覗かせている、薄汚れたビーグル犬の身体があった。

「あら。姿が見えないと思ったら、そんなところにいたのね。その犬、ロンドンの広場にいたのを連れてきたのよ」

すっかり不意を突かれた形となったウィルカは、年老いたビーグル犬に顔中を嘗め回されるがままになっていた。

「どうやら、ショコラもウィルカのことが気に入ったみたいね。子供と動物に好かれる人間に悪い人間はいないわ。その子たちは本能でそれを嗅ぎ分けるから」


ウィルカが自分の部屋に戻ったあと、アタシは、ノルウェーの森から切り出したパイン材(松の木材)で作られたチェストの奥から、「ブーナット」を取り出した。

ハレの日に婦人たちが身に纏う、ノルウェーの民族衣装。 その華やかな色彩を眺めているうち、アタシはいつしか眠りに落ちていた。



~19世紀 ノルウェー~


オーロラの輝く北欧のノルウェーの国に、ペール・ギュントという若者がいました。

ペールには、オーセという年老いた母親がいましたが、日曜日に教会にお祈りにも行かず、家の手伝いに働くこともしないで、いつもどこかに飛び出しては遊んでばかりいました。

「いつか自分は皇帝になる」

「大金持ちになって故郷に帰る」

そんな妄想のようなことばかりを言って、母のオーセを心配させていたのです。


ある日ペールは、村の結婚式で見かけた花嫁のイングリに興味を持ちました。

その結婚式には、ソルヴェイグという村娘も参列していました。

小麦の穂のように金色に輝く長い髪と、降ったばかりの雪のような白い肌をしたソルヴェイグの美しさにペールは心を奪われましたが、望んだ結婚でないことを哀しんでいるイングリをうまく口説き落として、花嫁を結婚式から奪い出してしまいました。

しばらくはイングリといっしょにいたペールも、すぐに飽きてしまいました。


悲しみに暮れるイングリをその場に捨てるように置き去りにして、自分はどこかへと消えてしまったのです。

そして今度はあろうことか、山の洞窟に棲んでいる魔物の王トロルの財宝に目が眩んだペールは、トロルの娘と結婚の約束を結んでしまいます。

しかし、魔物の娘と結婚する気など最初からまったくなかったペールは、その約束を破って、トロルたちの洞窟から命からがら逃げ出します。


ペールはやっとのことで、隠れ家にしていた森の小屋に帰ってきました。

すると驚いたことに、イングリの結婚式で見かけたあの村娘のソルヴェイグが、自分の小屋の前に立っているではありませんか。 ソルヴェイグもまた、一目見たペールのことがずっと忘れられずにいたのです。

すっかり舞い上がったペールは、夢見心地でソルヴェイグを小屋の中に招き入れました。

森の小屋でいっしょに暮らしている間、ペールはソルヴェイグをお姫様のように扱って、身体に触れることもしませんでした。


「ここで待っているんだよ」 ある朝、ペールはソルヴェイグの額に優しく口づけをして、小屋から出てゆきました。

ソルヴェイグは小屋の中で機を織りながら、愛しい恋人が帰ってくる日を、それからずっと待ち続けました。


何年も何年も……。



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冬が過ぎると 春は急ぎ足で去り

夏が行けば 年の終わりを迎えるだけ

いつか あなたは私の胸に帰ってくる

約束どおり 私はあなたを待っているわ



……どこか遠くから、教会の鐘のような音が聴こえました。


――私はもう、待たない。


幾度目かの春を迎えたころ。

扉を開けてソルヴェイグが外の世界に出たとき、頭の中で、だれかがそう言うのを聞きました。

(つづく)



この文章は、コーエーテクモゲームス『大航海時代 Online』の世界観と舞台、登場人物をモチーフに、筆者ウィルカが創作したものです。

実際の『大航海時代 Online』のストーリー、その他とは直接関係ありません。



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『ソルヴェイグの歌』
 シセル・シルシェブー

作詞:ヘンリク・イプセン
作曲:エドヴァルド・グリーグ

歌劇『ペール・ギュント』の作中で、恋人のペールのことを想いながら唄う、清らかな乙女ソルヴェイグの歌です。







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